「てふてふが一匹韃靼海峡を渡っていった」

「てふてふが一匹韃靼海峡を渡っていった」

詩のことはよくわからないけど、安西冬衛のこの詩は折りに触れて思い出す

一匹の蝶が波にうねる大海原の上をひらひらと飛んでいく。

その情景を思い浮かべると言いようのない悲しみが胸を衝く。

そしてああ自分もこの蝶のような存在だなと、思う。

フリーランスは、何の拠り所もなく大海原を飛ぶ蝶と同じ。

力尽きると落ちるだけ。

だれも助けてくれない。

しかし、景色は広いんだ。

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ぼくが広告のキャッチコピーが嫌いな理由(2)

最近、思う。

「思う」がつくキャッチコピーが多くないかと。

文末を「思う」で締めくくれば、なんとなくキャッチコピーっぽくなるからつけとけ、みたいな。

たとえばこんなコピー。

◎日本の時計は美しいと思う。
ぜんぜん思わんでいいと思う。実際に美しいんだから。「日本の時計は美しい。」と言い切ってくれたらどれだけ気持ちいいか。

◎日常でたまった疲れは、日常でとれないと思う。
わざわざ思わなくても、「日常でたまった疲れは、日常でとれない。」ではなぜだめなのか。なぜストレートに言ってくれないのか。

コピーライターの川上徹也さんは著書『こだわりバカ (角川新書)』で、「空気のように何の効果もないようなフレーズ」のことを「空気コピー」と揶揄されている。「思うコピー」の多くも「空気コピー」だったりして??

◎ブラで女の一日はけっこう変わると思う。
お、おう。。ぼくは知らんけど、そう思うならそうなんでしょう。でも、なぜ「変わる。」で締めてはいけないのか。「けっこう」をつけているんだから、断定を避ける目的の「思う。」はいらないはず。

◎日本人の味覚は世界一繊細だと思う。
ぼくが「思うコピー」に違和感を覚えるきっかけになったコピー。お茶のCM。全体的に味のあるCMなので、ある意味で「思う。」という語感がCMの雰囲気をやわらかく包み込んでいい感じになっているかもしれない。

だけど、仮に「日本人の味覚は世界一繊細です。」としてしまうとコピーになりませんね。ということは、コピーにならない一文を「思う。」という文末表現でごまかしているのか。まあ広告規制にひっかかるのかもしれないけど、なんかもやもやしてしまう。

コピーライター時代に気の利いたコピーが一本も書けなかった元コピーライターは思うのであります。

◎賃貸住宅を変えるのは、木だと思う。
これも最近気になった一本。そもそも、だれが思ってるの? 「賃貸住宅を変えるのは木です。」と言い切ったらふつうの一文になってしまうしちょっと意味もわからないし、広告文はむずかしいですね。

◎言えないことの方が多いから、 人は書くのだと思う。
ほんとそうだと思う。ラブレターもそうですね。でも、このキャッチコピー、上のコピーと同様、だれが思ってる? 「思うコピー」全般にいえることだけど、雰囲気に乗せられて「そう思わされている感」があるのがきもちわるい。

ちなみに、これと同じようなコピーで好きなのはコレ↓

◎言えないから、歌が生まれた。
ミスチルの『君が好き』のキャッチコピー。いいなあ! こんなコピーを一度でもいいから書いてみたいなあ!

◎老いてゆく姿を孫に見せること。それも教育だと思う。
どれもこれもたしかにそうなんです。でも、しつこいけどなぜ「思う」のか。このコピーも同様、「老いてゆく姿を孫に見せること。それも教育です。」としてしまうとコピーにならない。文章の座りがわるいというか。じゃあ文末表現の「思う。」は、座りを良くするためだけのものなのか。

◎昼寝の姿を子どもに見せること。それも教育だと思う。
いま考えました(笑)。こんなアホみたいなコピーすらも、下手すれば広告になってしまいそうな盲目的な感じが広告にはありますね。

一方。

こんな「思うコピー」もあります。

◎年賀状は、贈り物だと思う。

ん?

なぜか「思う。」が気になりにくい。「空気コピー」との違いはなんだろうか。消費者が漠然と思っていること、期待していることをあたたかく、絶妙に言語化してくれているからかもしれない。

このコピーは誰が書いたんだろうと調べると、岩崎俊一さんだった。仲畑貴志さんと並んでぼくが好きなコピーライターの二大巨頭。岩崎さんは2014年に亡くなっていたと知りショックを受ける。

そして次のコピー。

◎私がきれいになることも、親を幸せにすることだと思った 。

これはいい!

結婚式のコピー。なんでいいのかなと考えると、主体があるからかも。「私」という主体があるからこそ、親を思う娘の思いをその一文から感じられるからこそ、読み手は主人公である「私」に共感できるのかもしれない。

反対に、「思う。」の主人公が不在の場合、読み手は無意識にその主体は広告主だと理解し、「思わされている」「誘導されている」と無意識に感じて共感できないのかも。

ちなみに、このコピーを書いた方を調べると、『大人たばこ養成講座』シリーズを担当された岡本欣也さんでした。この方も僕が好きなコピーライターのお一人で、なんと岩崎俊一事務所で活躍されていた方!

前述の「年賀状は、贈り物だと思う。」というコピーの広告主である日本郵政の仕事を、岡本さんは岩崎俊一さんと共に手がけられていたと。やっぱり好きなコピーを書く人はこうやってつながっていくなあ。

番外編

◎一流は勝てると思い。二流は勝ちたいと思う。
これもいいなあ。スポーツ選手の心理を言い当てている。そもそも何のコピーやろ。

まとめ

すっきりとした解決には至っていませんが、文末が「思う。」のキャッチコピーの良し悪しは、その一文に主体があるかどうか。だれが思っているのかというその存在がはっきりしていれば、コピーにストーリーが宿る。結果、消費者はその主人公に共感でき、コピー自体に意味と価値が生まれるのでは、と「思う。」

関連ページ:ぼくが広告のキャッチコピーが嫌いな理由。

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無料の「音声入力」はテープ起こしに使えるか?

書籍ライターの仕事のなかでテープ起こしがもっともきらいで、もっともつらい作業です。

テープ起こしとは、インタビュー音源を聞きながら文字化していく作業のこと。インタビュイーの話す速度のままキーボードを高速で完ぺきにタイピングできればいいけれど、実際には何度も音源を巻き戻したり、再生速度をゆっくりしたりして作業するため、通常の録音時間の2倍や3倍はかかります。

このテープ起こし作業の何がつらいかって、生産性が極めて低いということ。苦労してテープ起こしを仕上げても、それで原稿が完成するわけではなく。そのテープ起こしを読み込みながらゼロから原稿を書いていくことになります。

テープ起こしは原稿を執筆するための準備でしかなく、しかも準備でありながら時間がかかりすぎるうえ、その苦労によってゼロベースの原稿が0.1ミリでも進むのかというとそうではないという、むなしさがあります(笑)

このテープ起こしの虚無感をどうにか緩和できないか。

あるときから「おこしやす」というフリーソフトを活用し始め、キーボード入力の効率がかなり良くなりました。

だからといって、音源を聞き返しながらタイピングするという苦悩、虚無作業がなくなるわけでなく。

願わくは、インタビュー音源を自動で文字に起こしてくれる文明の利器はないものかと、たまに思い出してはネット検索をかけて探したりしてきました。

***

できればフリーソフトで実現したいのです。

音源を文字化する有料ソフトはあるみたいだけど、精度はまだまだ発展途上というのが現実のようで。技術が確立してくるまでのあいだは、無料の領域でどこまでできるのかというのを模索したいなと思うわけです。

調べると、YouTubeの自動字幕起こしというのがあって、その機能をテープ起こしに代用できる可能性があるかも(?)みたいな他サイトの情報がありました。(コレ→音声認識で楽にテープ起こしをする方法とは(2))※YouTubeの自動字幕起こしのヘルプページ このページを見ても正直、使い方はさっぱりわかりません。

いろいろてこずりながらYouTubeにサンプル音源(実際には動画コンテンツ)をアップロードし、試行錯誤のすえ、自動字幕化に成功しました。

しかし――。

使い物になりませんでした。自動で起こされた字幕の日本語はめちゃくちゃで、いちからテープ起こしをしたほうがよほど早いといえるほどのレベル。

***

YouTubeはあきらめ、次にチャレンジしたのはGoogleドキュメントの音声入力。

Googleドキュメントで文章を書く際、マイクのアイコンを押すと音声入力機能がONになり、PCの場合はマイク、スマホの場合は電話の聞き取り口に向かって話すことで音声入力で記入できます。

「超」シリーズで有名な野口悠紀雄先生が著書『話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる』でも紹介されている方法で、これは脈ありかも(?)と期待に胸が高まりました。

方法はこうです。

インタビュー音源を聞きながら、そこで語られている内容を自分の言葉で正確に話す。
その自分の声をGoogleドキュメントの音声入力機能に認識させて文字化する。

インタビュー音源を聞きながら実際に話す手間はあるけれど、タイピングの苦労を考えるとだいぶ楽なのではと考えました。

結論。

音声入力の聞き取り能力は予想以上のレベルです。

何がすごいって、単語レベルではなく、文章として日本語を認識して文字化している点。いったん間違って言葉をテキスト化しても、前後の文脈を捉えて修正しながら文字化していっています。

さすがGoogle……。

ただし、テープ起こしとして代用するには無理があるというのが結論です。

理由は、音声入力機能が1分程度でなぜかOFFになってしまうから。

そのつど、音声入力のマイクボタンを押し直して機能をONにしなければなりません。というか、音声入力の表示としてはONになっているのに、1分ほど経過すると認識しなくなる。

理由を調べていると野口先生も同じようなことを書かれていたので、Googleドキュメントの音声入力機能も発展途上だとあきらめました。

***

テープ起こしはつらい作業には変わりはないけれど、自分で取り組む意義がひとつあります。

それは、インタビュイーが力を込めて話をしている内容を再確認できること。

実際のインタビュー音源を聞き返すことで、取材相手がいちばん伝えたいメッセージを冷静に客観視できるのです。

その意味で、テープ起こしはインタビュイーに対して誠実で実のある原稿を書く通過儀礼なのかもしれません。

とはいえ、技術の進歩を待ち望んでいることに変わりはありませんが(笑)

***

※2017年5月12日追記

この記事を読んで「スピーチノート」というスマホアプリを知り、さっそく使ってみました。

これは素晴らしい!

Googleの音声入力機能を使っているので高い精度で文字変換してくれるし、〝少し間をおいて考えたりしながら〟長めの文章を打ち込みたいぼくにとって最も便利だと感じたのは、しゃべらず黙っていてもマイクがオフにならないこと。

前述のとおり、Googleの音声入力はしばらくするとマイクが勝手にオフになってしまうんですね。正直、この〝勝手にオフ〟がGoogle音声入力のすべてを台無しにしてしまっている。

スピーチノートはそのGoogleの欠点を補完してくれている。現時点では、理想に近い音声入力のスマホアプリかもしれません。(スピーチノートのPC版があればなあ)

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陸上トレーニングメモ(2016.7.10)

近所の堤防でトレーニング。

・ジョグ10分
・もはやジョグレベルのスピードの坂道ダッシュ×5本
・50m×3本
・100m×2本
・150m×1本

きょうは腰の状態が悪く、坂道ダッシュはほとんど走れない状態。

速い動きはやめようかと思ったけれど、少し休んで50mを軽く走ってみる。案外いけそうだったので3本。7秒前半から半ば程度で少し抑えて。

100mはほぼ全力。1本目12.2。感覚より速いのでタイム測定の歩幅を47歩半と半歩ずらして2本目12.5。たぶんいまの実力はこのくらい。競技場でスパイクを履いてちゃんと走ってやっと12秒前半という感じ。11秒代はまだ出そうにないなー。

最後は150mでシメ。バテバテ。18.5。

先週2日続けて速い動きをしたのでその疲労が腰から抜け切れていない。

しかしその状態でも走れたのは収穫。日ごろの姿勢レベルから体をいたわって走れる体をつくっていこう。

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陸上トレーニングメモ(2016.7.3)

2日続けて近所の堤防でトレーニング。

・ジョグ10分
・かる~い坂道ダッシュ×3本(30歩)
・50m×2本
・100m×2本
・150m×1本

暑い。

50m1本目は腰の様子をみながら。7.3。2本目はちゃんと走ったけど6.9。あかんなー。

100m、1本目12.4。感覚やイメージより速い。47歩計測。測り間違えかな。2本目は12.2。さらに上がったけど感覚やイメージより速い。2日連続速い動きをして細胞にスイッチが入ったのか。

最後は150mでシメ。100mで力尽きていたのでバテバテで18.6。

2日連続で練習したのは数年ぶり。少し前まで腰を痛めてまともに走れなかったことを考えると大きな進歩。

きのう、速い動きをしたけど、きょう、腰は大丈夫だった。

走って治す、という治療はうまくいきつつある。

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陸上トレーニングメモ(2016.7.2)

きょう、初セミ。夏やな~。

さて、近所の堤防でトレーニング。

・ジョグ10分
・かる~い坂道ダッシュ×5本(30歩)
・50m×2本
・100m×2本
・150m×1本

腰の状態が比較的良いので強度を高めて。

坂道ダッシュはフロート程度のゆっくりで。走る感覚としては悪くないけど体力が落ちすぎているので全体的に緩慢な動き。

50mは腰を少しかばいながらもちゃんと走った。でもタイムが出ない! 2本とも6.95。向かい風だったので6.8ほどだと思う。

100mは1本目測定ミス、2本目12.9。競技場でスパイクを履いても12.5が限界だと思う。11秒台は遠いなー。

最後に150mでシメ。18.3。劇的に遅いわけではないのが救い。

暑くてバテバテになったけど、汗をたくさんかいて気持ちよかった。

仕事がデスクワーク中心なので、その対極で体を動かすのは精神のバランスをとるのにぴったり。

走ることは健康づくりでもあり、健康づくりはぼくの仕事なのだ。

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原稿や資料を印刷するときは「2ページ見開き」で一覧性をもたせたい

書籍ライターとして新しく担当させていただく本の案件の仕込中。

wordのコメント機能を利用し、テープ起こし原稿(インタビューの音源を文字に書き起こしたもの)の重要箇所に要約を書き込んでいます。

2時間のインタビュー音源を文字に起こすと、著者の話すスピードにもよりますがだいたい2万~3万文字になります。それだけの文字がだーとひたすら並んだ状態のままだと、どの箇所に重要な内容が書いてあるのかパッと見て判別つきません。だからコメント機能でポイントを抽出して要約し、視認性を良くするわけです。

この作業をやっておくと、実際に原稿を書く際に都合が良い。テープ起こしの地の文の横にポイントが並んでいるので、その要約部分をさーっと流し読みするだけで内容がつかめるからです。詳しい内容を再確認したい場合は、横の地の文を読めばいい。

書籍の原稿を書くまでには、ほかにもいくつかの作業のプロセスがあります。機会があれば公開します。原稿を書くのは最終段階で、それまでの仕込みがじつは大変だったりします。

***

テープ起こし原稿に要約を書き込んだwordファイルは、2ページの見開き展開で印刷します。

理由は、一覧性を良くしたいから。

パッと見た際にできるだけ多くの情報を視認し、できるだけ多くの情報を一度に処理したいのです。1ページずつだと視界に入る情報が少ないから気持ち悪いというか、フラストレーションが溜まる。

テープ起こし原稿に限らず、仕事の資料やHPをプリントアウトする際も2ページ展開が基本です。

ふだん、見開きの紙の書籍で全体を捉えるのに慣れているからかも(?)

巻物になると左右に長すぎて、それはそれで面倒くさそう。2ページ見開きというのは、人間の視野の中でも焦点を合わせて内容を理解しやすい、調度よい画角なのかもしれないですね。

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「逆説の接続詞」をよく使う人は自分の頭で考えている?

これ(文章の展開がパターン化しない接続詞の使い方、いまだ模索中 )と似た内容ですが。。。

接続詞をなるべく使わない文章を心がけていますが、「逆接の接続詞」は例外的にけっこう使います。

文章を書く行為は極めて主観的、あるいは内省的な営みなので、ともすれば独りよがりの展開になってしまいかねません。書き進めるうちにどんどん悦に入ってきて、我に返ったときには読者を置き去りにしていた、みたいなことに陥ってしまう可能性もなきにしもあらずです。

そうやって書き手の独壇場で筆が進んだ文章は突っ込みどころ満載で、読者の頭の中は「?」のオンパレードになっていきます。

だから書き手は、読者が疑問に思いそうな箇所や反論をさしはさみそうな箇所を想定し、読み手の理解を手助けしていかなければならない。

***

読者が「?」と思いやすいのは、たいてい書き手の意見や主張を述べている箇所です。「私はこれこれこう思うのであります」という書き手の主張に対して、「そんなことあれへんやろー」と突っ込みを入れる、みたいな感じです。

そうした読者の「?」を残さず摘んでいくためには、書き手は意見や主張の根拠、背景をていねいに説明しなければなりません。

そのとき、逆接の接続詞で自説を補強するのが効果的だったりするのです。

「私はこれこれこう思うのであります」と述べたあと、読者から「そんなことあれへんやろー」という突っ込みが入ることをあらかじめ想定し、「私のこれこれこういう意見に対して、それそれそういう反論があるでしょう。しかし、私はほれほれほういう理由でこう考えるのであります」といった具合です。

この展開は、あまり多用すると説教じみてうるさいので注意しないといけませんが、読者に寄り添った文章にしたいという書き手の努力が表れた結果だと個人的に思っています。

***

むずかしいことは抜きにして、文章を書く際に「逆接の接続詞」を日常的に多く使う人は自分の頭で考えている人、ともいえるんじゃないかと最近思ったりします。

「しかし」や「だけど」という接続詞は、自分の考えがなければ使うタイミングは多くないですから。

話し言葉で「しかし」ばっかり言ってる人は友だちになりたくないですけど(笑)

***

※ちなみに接続詞に関する好著はこちら『文章は接続詞で決まる (光文社新書)』。接続詞の役割と効果的な使い方が凝縮した一冊で勉強になります。

あとこんな本『文章が一瞬でロジカルになる接続詞の使い方』も。論理的な文章の書き方について、このページで書いたのと同じようなことが書いてありましたので参考に。

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田舎暮らしの公共交通機関事情、都市部(大阪市)へ出るテクニック

現所在地で実家の兵庫県加東市に生活拠点を移す前に住んでいたのは尼崎市武庫之荘というところで、最寄駅の阪急・武庫之荘駅から梅田駅まで約15分でした。武庫之荘駅まで自転車で5分ほどだったので、大阪にはざっと30分あれば行けました。

それが――。

いま住んでいる加東市は田舎に加えて電車が思いっきり不便な場所。JRのみを使って大阪に行こうと思うと小旅行気分で仕事どころではなくなってしまいます。でも仕事で大阪市内にはしょっちゅう行くわけで、引っ越しする際のいちばんの心配事は交通面でした。

でも加東市に帰ってきて2年半。結論をいえば問題なし。帰省前と同じように週に数回は大阪市内に取材、あるいは全国に出張に出ていますが、心配していたのがアホらしくなるほど普通にやっています。

***

解決策は「電車+車」にありました。

加東市からJRのみで大阪まで行こうと思うとJR加古川線というのに乗って加古川駅に出て、そこからJR神戸線の新快速に乗り換えて大阪駅まで行くことになります。

最寄駅から大阪駅までは乗り継ぎがうまくいって乗車時間1時間半。家から駅までは自転車で10分なのでまあ余裕を見て2時間弱かかることになります。

加えて加古川線は1時間に1本程度のローカル線なので、行きは時間をあわせて家を出ることはできても帰りはそんなうまいこといきません。下手すれば1時間待ちもあるので日常的に使うのには現実的でない。

田舎に生活拠点を移す前、どうしようと考えながらネットで広域地図を眺めていると、大阪から篠山まで伸びているJR宝塚線というのが目に入りました。

(これええんちゃうん)

ということでいろいろ調べると、まず車でJR宝塚線の西宮名塩駅(宝塚駅の2駅篠山より)まで車で走り、そこで電車に乗り換えて大阪駅まで行くというのが最短距離で労力も少ないという結論に至りました。

西宮名塩駅には立体駐車場があり、平日だけの契約なら1万1880円で借りられるとわかり即契約。駅までは車を利用し、下道だと時間がかかる&面倒くさいので一部区間を中国自動車道を利用して40分ちょい。西宮名塩駅から大阪駅までは快速に乗れば30分。乗り換えを含めて最短で1時間20分で大阪まで行ける方法を編み出しました。

車で大阪まで行ってしまうともう少し早いのですがさすがにそれはお金がかかります。現実的には「車→西宮名塩駅→JR乗換→大阪駅」という手段が最適だと判断しました。

車なので真夏や真冬でもストレスがないし、西宮名塩駅での乗換時には屋根があるので雨や雪も心配ない。電車は時間帯によっては座れて仕事ができるし、車でドライブ気分でストレス発散にもなる。乗車中に桂米朝さんをずっと聞いて落語が好きになりました。

飛行機で出張の際は伊丹空港まで車で1時間弱だし、九州方面に出張の際は姫路駅まで車で50分弱、そこから新幹線に乗れば楽。東京方面に出張の際は新神戸駅で駐車場代がタダになる方法を見つけてしまったので条件によっては利用しています。

加東市は田舎で公共交通機関は不便ですが、いろいろな方法を駆使すれば交通事情のマイナス面をかなりカバーできるとわかりました。そもそも毎日通勤するわけではなく取材は週2、3回以内にしているので良い気分転換という感じです。

***

問題はコストです。

帰省前は阪急武庫之荘駅から梅田駅まで片道220円。時間は片道30分。

帰省後は車のガソリン代、高速道路代、電車代すべて合わせて片道約2100円。時間は1時間30分。

帰省前後で、片道の料金にして1880円、時間にして1時間のコスト増がそれぞれ発生しています。往復だと料金3760円、時間は2時間のコスト増。

年収1000万円と仮定し、1ヶ月25日稼働で日給3万3000円、1日8時間労働で時給4150円。

すると、大阪に1回取材に行くと2時間余分に時間がかかるので時給4150×2=8300円のコスト増。これに交通費の往復増加分の3760円を足すと1万2060円。

つまり大阪に1回取材に行くと、帰省前と比べて金額的に1万2060円のコスト増が発生し、週平均して2回大阪始め全国に取材に行っているとすると、1ヵ月で取材8回(4週×2回)×1万2060円=9万6480円のコスト増、1年換算ではざっと120万円の増加です(駐車場代省く)。

想定がいろいろオーバー気味の面があるので実際はそこまで行かない気もしますが、まあだいたい加東市という田舎に住むことで交通面でのコスト負担は100万円程度と見積もっていいかなと思います。

***

ただし、田舎に住むことでもろもろの生活費が削減できているというメリットがあります。といっても正直帰省前とあまり変わってませんが(笑)、ちゃんと比較すれば田舎に住んでいる現在のほうが支出は抑えられているはずです。それを勘案すると交通費負担の100万円をもう少し抑えられるようになります。

仮に田舎にUターンすることで1年で70万円コスト増になったとしましょうか。

その70万円の負担をどう捉えるか。

これはもう個人の考え方によると思います。

ぼくが田舎に生活拠点を移すことになった大きな理由のひとつは子どものためなので、自然あふれる田舎で子どもをのびのびと育てられるメリットを思うと70万円なんて安すぎる金額です。

近所の人に新鮮な野菜をいただけるし、ほかにも田舎暮らしのメリットはたくさんあって恥ずかしいほどベタな言い方をすればプライスレスの価値があります。

70万円余計にかかるんだったら70万円余計に稼げばいいだけの話で、それほど難しい問題じゃないです。

まあそんな感じで田舎で楽しく生活しながら、仕事も充実しています。

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人間の体も仕事の姿勢も軸が大事

人間の体は数千、数万のバランスによって成り立っていると個人的に思っています。

ひとつ崩れると、その崩れを補うためにほかの箇所が崩れ、その崩れを補うためにまた別の箇所が崩れ……そうやって際限なく崩れ支え合いながら、全体として体の均衡が奇跡的に保たれている。

ある意味で非常に危うい状況です。まるで小さな子どもが積み上げた積み木のように。

うちの4歳の娘は積み木をむちゃくちゃに重ねていくけれど、なぜか崩れずけっこう高くまで積んでしまいます。人間の体も同じやなあと、それを見て思ったりします。

だから軸をつくったジョギングを重視しています。

軸足の接地面から脳天まで軸を通し、トントンと振動を体に加えながら走る。そうすることで、まるで不揃いの積み木が軸に沿って揃っていくようなイメージで体のバランスが整っていく(というイメージを持つ)。ジョギングする際に軸はとても大事です。

仮に軸がずれた状態でジョギングしてしまうと、そのずれた軸に沿って体が再調整されていきかねず、全体として体のバランスが崩れてしまいかねません。

客観視するのはむずかしいですけどね。だからカイロや整形外科で外部の目を入れる。正しい軸が通っているのかを客観的に評価してもらう。主観的な判断だけでは自分の体を見極めるのは不可能です。

軸が大事というのは、体づくりだけでなく、仕事の取り組み姿勢や生き方にも通じるなと最近よく思います。

ぼくの仕事における軸はこれです。

「職業は編集ライター、仕事は一人でも多くの人の役に立つこと、一人でも多くの人に感動や喜び、希望を与えること。」

この軸に沿ったことをやる、ずれたことはやらない。そう意識して仕事に取り組んでいます。

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