長く積ん読状態にあった尾川正二先生の『文章のかたちとこころ―書くということ (ちくま学芸文庫)』を読了。尾川先生の文章関連の本は清水幾太郎先生の『論文の書き方 (岩波新書)』に代表される文章関連の本とともに座右の書となっています。
『文章のかたちとこころ』はタイトルどおり文章の表現や形式といった「かたち」の解説にとどまらず、「こころ」とことばのかかわりまで示唆してくれる本です。かたちにこだわるだけでなく、こころにまで踏み込むことで、気品と節度をもった文章が書けるようになる、そう教えてくれます。
打ちのめされたなあ。
〝いい文章〟が書けるようになるまで、いったいどれほどの修練が必要なのだろう。
こころに響いた内容のほんの一部を以下に。
***
- 知らないことは語らぬこと。空虚であればあるほど、充実感を装う冗漫な文章になり、スピード感を失う。
- 作意的になったり、窮屈なことばに頼ると、空疎さを暴露するにとどまる。
- 自分への信頼――自分の眼、自己への誠実、それが生きた文章を創造する。
***
ブックライターとは、極端にいえば自分がよく知らないこと、自分の専門外のことを著者に成り代わって書く専門家といえます。でも尾川先生は、知らないことを語ろうとすると「充実感を装う冗漫な文章」になるから注意せよとぼくに語りかける。
ブックライターとしての取り組み姿勢。自分のことばで生きた文章を書けるようになるまで、担当する書籍の分野についてよく学べ、そう忠告を受けたようで身がひきしまる。
『文章のかたちとこころ』にはこんな一文もありました。
- 文章を書くということは、一人の人間の能力全部を出し尽くすということである。
結局、ライターとしての実力を高めるには、自分を磨くしかないのか。先が長いなあ。