③ 自分の失態で誰かの信用に傷をつけるリスクを知った
フリーライターになってからの8年間で2回の遅刻。1つは、「ライターのぼくが時間を大切にするようになった失敗談(2)」で取り上げました。
もう1つは完全に自分のミス。ぼくが時間にこだわる原体験の2つ目でもあります。この話にふれるのは勇気がいりますが、自戒を込めて書き残しておきます。
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その恐怖の電話は突然、やってきました。
「高橋さん、いまどこですか?」
ぼくは自宅のデスクで原稿に追われていた最中で、
「家で原稿を書いていますよ」
と答えました。
「えっ」
と電話先の相手の方。
「取材、今日ですよ……〇〇で待っています」
あまりにもの衝撃で、さまざまな思いが脳裏を駆け巡りました。
しかし力づくで我を取り戻し、すぐ取材の依頼メールと自分の手帳を見比べて、
「終わった」
と首を垂れました。
間違えていたのはもちろん自分で、待ち合わせの時間だったまさにそのとき、自宅のデスクにいたのです。
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次の瞬間、ある方の顔が思い浮かびました。
ぼくとクライアントをつないでいただいている方です。ぼくが遅れた場合、その方に迷惑がかかるのは明白でした。
自分が全責任を被るのならまだしも、自らの失態でほかの誰かの信用に傷をつけることになる。
これほど辛いことはありません。
倒れそうになるのを踏ん張りながら、即座に取材の準備をして家を飛び出し、現地に直行。関係者の方々のあたたかいご協力のもと、何とか乗り切りました。
仕事を失う覚悟をしていましたが、その後も継続して発注いただいています。このご恩は一生をかけて返していこう、そう心に留め置いています。
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何のとりえもないライターですが、唯一、自信を持っていたのは「時間を守る」ことでした。
ぼくの父方の祖父は「時計のように正確な人」と近所の人たちの評判だったそうです。毎朝、決まった時間に家を出て、同じ道を歩いて仕事に通っていたからです。
その祖父の血を受け継いだ父も同じような性格の人で、その祖父と父の血を受け継いだ自分も時間を大切にしていました。
ところが、自分の背筋を伸ばしていたその自信が、失態によって完全に折れてしまったのです。
もう二度と同じ失敗は繰り返さない。その宣言のために、あえてこの話を書きました。
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なぜ取材の日にちを間違えたのか。自分なりに頭を整理して原因をまとめました。それをもとに自分なりの再発防止策を立てて実行しています。
もう一度、自信を育てられるように。