ブワッ、ブワッ、ブワッ、ブワッ――
地震の警報音がけたたましく鳴り響いてその場が凍りつく。
次第にビルが左右にゆったりと揺れ始め、徐々に揺れ幅が大きくなっていく。
ぼくも含めた取材班は関西在住で地震警報音に慣れていない。場がざわめくなか、インタビュイーの社長さんは何事もないようにすっと席を立ち、災害用ヘルメットを手に取って「これをかぶってください」と女性取材班の前にそっと置いた。
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4月1日午前11時40分ごろ、三重県南東沖でマグニチュード6.1の地震がありました。取材場所の大阪市は震度2でしたが、オフィスビルの20階にいたので横揺れがけっこう大きくて動揺しました。
そのなかでも社長さんの対応はとても冷静で、話を聞くと阪神淡路大震災を経験され、東日本大震災時には東京オフィスで被災されたとのこと。
東日本大震災当日は、阪神淡路大震災時の経験を活かして地震直後にスタッフをコンビニに走らせて必要物資を購入し、その日は帰宅を希望する従業員以外の全員でオフィスに泊まったそうです。
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その会社では、社長さん自身の経験を活かしてBCP(業務継続計画)に積極的に取り組まれています。オフィスのすべてのデスクに従業員の人数分のヘルメットがかけられているほか、水や食料も備蓄されていました。
ただし、かたちだけの災害対策は「そのとき」に指示系統が混乱し、十分に機能しないかもしれません。
企業トップの冷静さが災害対策に不可欠なのではと、取材時の社長さんの対応を見て思ったのでした。