信頼する税理士の先生から、「ビジネスモデルは貸借対照表には計上されない」という話を伺いました。
たとえば創業間もないベンチャー企業の場合、利益の源泉は経営者本人の頭の中にあるビジネスのアイデアであるケースが多いはずです。
しかし唯一最大の経営資源であるその無形の財産は、貸借対照表の資産の部には計上されないのです(取得原価主義のため)。これから利益を生み出すであろうビジネスモデルは会計上、「無い」のと同じだということです。
スタートアップ企業は利益を稼ぎ出す資産を持たないまま走り出し、お金を借りる手段も限られたなか、それでも走り続けて事業を軌道に乗せなければならない。
そう考えると、ベンチャー企業の立ち上げはほんと難しいんだなというのがわかります。だからこそ起業家の血をかき立てるのだと思いますが。
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利益を生み出すビジネスモデルは会計上、資産ではない――。
フリーライターの弱点もこれに近いように思います。ライターとしての力はあっても、その力は定量評価としては資産とみなされないということです。
フリーライターにとっての最大の経営資源は自分自身です。しかし自分という存在は、ビジネスモデルと同様に貸借対照表には計上されません。
結果、フリーライターはスタートアップ企業と同じように、利益を生み出す資産を持たないなかで、自転車操業的に事業を継続していかなければならないという悲哀があります。
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ライターの経営資源は自分自身――。
これが何を意味するかといえば、自分自身が原稿作成マシーンとして、利益を生み出す装置として、「書き続けなければならない」ということです。
文章を書くのがまったく苦にならないライターは、ずっと物書きとしてやっていけるのだと思います。
ですが、ぼくのように物書きとしての先天的な資質が備わっていない努力系ライターの場合、「書き続けるしんどさ」と格闘し続けなければならないという辛さがあります。
それに耐えられなくなったライターは、出版社や編プロに戻ったり、自ら編プロを興したり、他の職業に転身したりするのかもしれません。
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「書く」辛さは身に染みているけれど、それでもライター業を天職としてまっとうしたい――。
そう願った場合、そしてぼくはそう決意しているわけですが、生き残る手段としては「書く」以外の利益の柱を打ち立てることでしょう。
その第2の柱を築くのが、ぼく自身の今後の課題です。
次回の記事はこちら→『「書き続けるしんどさ」との闘いからいかに抜け出すか(2)』