インタビュー原稿を書くとき、いちばん意識するのが冒頭の一文です。冒頭の入りがうまくいけば最後まで流れるように書けますが、入りをまちがえると最後までぎこちなさがつきまとうからです。
いつも思うのは、冒頭の一文はシャツの第一ボタンと同じだということ。(なんかうまく書けないな……)というときは、原因として冒頭の一文を真っ先に疑います。第一ボタンをかけちがえると、最後までずれたままになるからです。
滑り出しが本筋とずれていると、そのずれを修正するのが目的の展開になってしまいかねません。まるで出口のない迷宮から抜け出すゲームをしている状態。意地でも脱出しようと躍起になり、でも出口はないのでやがて疲れ果ててゲームオーバー、みたいなエンディングを迎えることになります。
原稿の展開は、常に本筋に沿っていなければなりません。樹木と同じように太い幹がずどんと通り、その幹から枝葉が伸びていくように関連する内容が紐付られていく。そんな原稿は読み手にとっては理解しやすく、書き手にとっては書きやすい、そう考えています。
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では原稿の本筋をとらえた冒頭の一文をどう見つけるか。
ケースバイケースですが、ぼくの場合、取材時に心に響いたことばやエピソードを足がかりにするケースが多いような気がします。奇をてらうことなく、純粋に感じたままに書き出すことで、その後の展開が次々頭に浮かんでくる、とまあ、そんな具合です。毎回そんな感じで書けたらベストなんだけど、実際には懊悩呻吟することもすくなくありません。
ただし、取材時の感動そのままに書き出した結果、ものすごくむずかしい展開になるケースもあります。理由は、おそらく取材テーマとは直接関係のない話で感じ入り、その余韻が抜けきれずに軸を見失ってしまっているから。
原稿の本筋につながる端緒をうまくつかみとるためにも、やはり取材テーマやターゲットなどをしっかり理解したうえでインタビューにのぞむ必要があると、いまこれを書きながら改めて思います。原稿の書き出しは、すでに取材時に始まっている――そういえるかもしれません。