『書籍ライターで生きていくには「コミュニケーション力」が絶対必要(2)』では、書籍ライターと著者との関係づくりについて考えました。
次に編集者との関係づくりです。
編集者は社内外の多くの関係者と関わりながら一冊の本をつくりあげていきます。5冊や10冊(あるいはそれ以上)は同時進行し、企画を考えたり、取材に同行したり、著者やライターから上がってくる原稿を整理したり……それはものすごく忙しく立ち回っています。
そうやってたくさんの人と関わるので、編集者はバランス感覚に優れた方が多いです。
そうした人からみると、おそらくぼくも含めたライターはどこか社会性に欠けた独特の生き物として捉えられているような気がします。ひと言でいえば、「このライターはちゃんとしている人だろうか」と。
だから編集者との関係づくりで書籍ライターがまず気をつけるべきは、ちゃんとすること。笑ってしまいそうなことですが、基本があるから応用があります。
ぼくは幸い、編集者という立場でライターと仕事をする機会がごく稀にあるので、いちライターとして活動する際は自分の言説を編集者の目線で注意深く律している(つもり)です。
たとえばメールや電話のやりとりもそうで。忙しい編集者に要点や要件が端的に伝わるメールの文面にまとめるのはもちろん、電話をするタイミング、さらにはそもそも電話をすべきかといった連絡の取り方にも気を遣います。
極力電話でやり取りしたい人なのか、基本はメールで済ませたい人なのか、SNSツールを柔軟に使う人なのか、編集者の仕事のやり方に応じてこちらの対応を合わせます。
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書籍ライターにとっての編集者との関係づくり、けっきょくは「慮る」ことに集約される気がします。編集者が置かれている状況に思いをめぐらせ、自分がいかに動くのかを考える。
さらに核心を突けば、書籍ライターが編集者を慮る最大のポイントは、自戒を込めて「納期を守る」ことと断言します。一事が万事で、納期を守れない時点ですべてが台無しになってしまいます。
じゃあぼく自身はどうなのかと聞かれると、納期を外した経験は一度もないと胸を張って言えるわけではありません。
編集者さんとの関係の中で双方のスケジュールを調整し合い、協力し合って進めてきました。でもこれは信頼関係ができていないと難しい調整で、ご迷惑をおかけした経験が一度だけあります。それは別の機会でまとめたいと思います。