書籍ライターに求められる能力の3要素。

『「コピーライターとフリーライターって何が違うの?」』でふれたように、書籍ライターは「代弁者」という立場が最大のポイントということでした。

どういうことか?

ライターの主観的見解を世に問うのではなく、あくまで著者自身の思いやスキルを代弁する立場ということです。

そのために書籍ライターに求められる要素は次の3つ。

① 引き出す
② 構成する
③ 書き著す

著者の思いやノウハウ、潜在的な考えなどを「引き出し」、その内容が読者に届くよう「構成」し、(著者が伝えたいように)読者に伝わる文章として「書き著す」こと。

「引き出す」ためにはヒアリング力が求められます。ぼくがインタビューで気をつけていることは別項目でお伝えします。

著者から本音を引き出すためには、大前提としてライター自身が著者から信頼されなければなりません。書籍ライターには著者と信頼関係を結ぶ人間力が不可欠です。

「構成する」ためには情報を整理する力が求められます。

個人的には書籍は「構成の美学」だと思っています。タイトルが書籍全体の軸となり、その軸に沿って章を展開する。各章には関連する項目が並ぶ。

書籍全体の構成が論理の飛躍や破綻なく、スムーズに流れてこそ、著者の思いが読者によどみなく伝わる本になる。

美しい本は、凛とした一本の立ち木のようです。

大地に根を張り、天に向かって太い幹を伸ばし、その幹から枝が分かれ、葉が生い茂り実をつける。

そういう立ち木は生命力があり、存在自体が神聖で美しい。構成が隅々にまで行き届いた本もそんな木の佇まい、生命力があります。

相手に伝わる読みやすい文章が書けるかどうかは、正直、この構成力にかかっているといってもいいかもしれません。

「書き著す」力はライターの真骨頂です。構成した材料を美味しく食べられるよう、いかに料理するか。情報の料理人としての腕が求められます。

文章を書くポイントはたくさんありますが、ぼくが大事にしている一つは、著名なブックライター・上阪さんが著書(『職業、ブックライター。』)で打ち出されていた「相場感」。

著者が伝えたい内容を、読者が読みたい内容に転換するためには、「世間の人たちが求めているもの=相場」を理解する感性が必要です。

ぼく自身、ここで説明した「3つの能力+人間力」を高いレベルで満たす領域にはまだまだ至っていませんが、編集者や著者に支えられながら、「一人でも多くの人の役に立つこと、一人でも多くの人に感動や喜び、希望を与えること」を目指して日々努力しています。

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「コピーライターとフリーライターって何が違うの?」

ライターをしているとたまに聞かれます。

「コピーライターとフリーライター、何が違うの?」

一緒といえば一緒なのですが、違うといえば違う。少なくともライター本人の心構えとしては、明らかに「違う」んです。

ものすごい独断で、おそろしく強引に「ライター」の種類を体系化してみました。

 

 

ライターの種類ざっくりいうと、「コピーライター」と「フリーライター系」に分かれ、フリーライターは「受身の仕事」と「署名記事の仕事」に細分化されるという感じです。

マトリクスで4つの領域に分類したほうが整理しやすいかもしれませんが、「代弁者的立場」と「主観的立場」に大別するためにあえてこの図のようにしました。(ジャーナリストやルポライターがこの位置づけなのかなど突っ込みどころ満載ですが…)

いろいろなライターがいる中で、コピーライターは図のように、広告のキャッチコピーを書く人。

本人の心構えとしては、クライアントを背負って立つ意識が強いです。クライアントの商品やサービスを売るための仕事ですから。

コピーライターは広告・広報・IRの文章担当の立場で、クライアントを強力にサポートしているという自負があります。

だから「コピーライター」という肩書をつけた時点で、「あなたの会社や商品・サービスを世に売り込むのが得意ですよ」と宣伝するようなもんです。

そのプレッシャーに耐えられるだけの実力と自信がある人は、「コピーライター」と名乗るのだと思います。

一方のフリーライターは、〝系〟とつけたようにライターの総称みたいなもの。実体はあいまいで、手がける媒体や得意分野が違ってきます。

それぞれの説明は割愛しますが、分類は「受身の仕事」と「署名記事の仕事」の2つ。

受身の仕事は「代弁者的立場」と言い換えも可能で、つまりは発注者がいて、その発注者の要求に忠実に応える、あるいは媒体の分野や特性を踏まえて文章を書く人。立場としてはコピーライターと似ていますね。

署名記事の仕事はそのままなので説明は省きます。

ぼくは「フリーライター系」の中でも「受身の仕事」、さらにその中の「書籍系ライター」です。

書籍ライターのスタンスは、あくまで著者の代弁者として一冊の書籍にまとめること。

この「代弁者」という立場が最大のポイントなんです(『書籍ライターに求められる能力の3要素。 』で続きを書いています)。

ライターの仕事は、実際にはこんなにきれいに体系化できません。得意とする媒体や専門分野を持ちながら、その周辺の仕事も請ける。それがライターです。

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「どうやってライターになったんですか?」

そう聞かれることがよくあります。

「ライターは専門性の高い職業なので、実績がないと仕事を得るのは難しいはず。でもどんなライターも実績のない素人時代があるわけだから、最初の一歩をどう踏み出した?」

そんな疑問も言外に含まれている気がします。

一概にいえませんが、ライターになる道は次の3つが王道の気がします(フリーランスのライター前提)。

①  広告代理店・広告制作プロダクション出身
②  出版社や編集プロダクション出身
③  新聞記者出身

※ウェブライター、ブログライターはここでははぶいています。

このうち、「③」はライターとしての実力は別格な気がします。

そのほか、「専門性の強い職業出身(金融やIT系企業で働いた経験をもとにライターに転身)」「リクルート関連企業出身」なども。

ぼくの場合は「①」。

大学卒業後に入った会社を「ライターになりたい!」と2年弱で退職。アジアを放浪したのち、パチンコ屋でバイトしながら大阪の広告制作プロダクションに履歴書を送り、素人ながら拾ってもらいました。

ここで疑問があるはず。

「素人なのに、どうやって採用された?」

広告関係の会社は即戦力を求めているので、基本、実績がないと採用されません。

ぼくの場合、最初に5社ほどのプロダクションに履歴書を送ったところ、連絡すらもらえませんでした。

そこで考えたんです。

「ライターの実績はないけど、文章は書けると思ってもらえばええんちゃうか」――と。

そこで履歴書を送る際、趣味で書いていたエッセイを同封したんです。

するとある広告制作プロダクションから面接に呼ばれました。

面接時の社長さんの言葉が忘れられません。

「エッセイ読んだで。下手くそやな。でも人情の機敏を感じる文章や。コピーライターは人の心を打つコピーを書く専門家。君やったらいけるんちゃうか」

履歴書に同封したしょーもないエッセイが採用の決め手になったわけでした。

その社長さんの心を動かしたという点で、冗談ではなく、すでにぼくは立派なコピーライターだったわけです。

ライターになりたい人は実績はなくても、その実績に変わるもの――具体的には「自分は書ける」ことを証明する何かをアピールすることです。

ぼくが採用されたのは2002年。ブログもない時代でした。いまはウェブを通じて自分の文章を発表できます。

ライター第一歩は、〝自分という商品を売り込み、相手の心を動かす文章を書くこと〟から始まるわけですね。

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