「桜ってなんできれいなんやろ」
嫁さんとそんな話になりました。
「そら、はかないからやろ」
「なんではかない?」
「そら、すぐ散ってまうからやろ」
「でもすぐ散る花ってほかにもあるよね」
「せやなあ……」
ここでふたり、立ち止まりました。
立ち止まり、考え、
「桜にはたくさんの思い出が付着しているからとちがうやろか」
というような漠然とした結論に至りました。
4月は出会いと別れ、期待と不安、入り混じった季節……なんてありきたりなことはいいません。
みなそれぞれ桜に思い出がある。
いや、桜を見るとなんとなく立ち上がってくる感情がある。
その思い出、感情にもう少しひたりたいのに、願いむなしくすぐ散っていくのが、なんとなく寂しいのかも、と思ったりして。
思い出がはかなさを生み出しているのなら、年齢を重ねるほどに桜は美しくなっていく。
年をとるのもいいもんだ。